日本テレビの大久保好男社長は7日の新年式典で要旨次のように挨拶した。
一、今年は当社にとって開局60年の節目の年である。次の60年に向けた「第2の創業の年」、大きな飛躍の年とするべく、全社員が一丸となって突き進んでいこう。そのためには、視聴者に最も支持されるコンテンツを作ることが第一だ。
一、昨年の年間視聴率は2冠にとどまった。好成績だと思う。しかし、8年ぶりに3冠王を奪回した1年前と比べると一歩後退だ。それ以上に気になるのは、全日は1年前と同じ8%を維持しトップだったが、ゴールデンは0・3ポイント、プライムは0・4ポイント下がったことだ。1年前の数字を維持できていれば今年も3冠王だった。当社の番組が1年前より幾分、輝きを失ったということはなかっただろうか。
一、事実を謙虚に受け止めていただきたい。そして、反省すべきは反省する。抜かれたら抜き返す。何が何でも今年は再び3冠王を奪い返す。これが今年の第一の目標であることをまずもって確認しておきたいと思う。
一、内外ともに多くの懸案が山積しているのが2013年だ。そうした中で当社は、報道機関としての重い責任があることを再認識しなければならない。ここ数年続いたBPOの審議案件のような愚かな過ちは二度と起こさないでいただきたい。
一、東日本大震災から間もなく2年になる。大震災の記憶を風化させず、復興への取り組みを後押しするために、報道機関として何ができるのかを、ぜひ考えて実行していただきたいと思う。
一、放送の世界は、これまでのようにテレビが広告媒体として優越的地位を保っていた時代は、過去のものとなりつつあることを改めて確認しなければならない。もし、私たちが変化への対応を怠り、現状に安住していたら、疑いなく当社は転落の道を辿っていくことになるだろう。
一、1年半前に社長に就任して以来、私は機会あるごとに、皆さんに繰り返し同じことを求めてきた。「開局60年を当面のゴールとして、日本テレビを大きく飛躍させよう」、「役員も社員も、自ら考え、自ら提案し、自ら実行してほしい」、「改革と挑戦が日テレ社員の行動原理だ」、「失敗を恐れるな。リスクをとろうとしないことが最大のリスクである」。これらのことは社内にかなり浸透したと思う。そしてこの1年半の皆さんの奮闘で相当の成果があがったと思う。視聴率のトップ奪還、放送収入のシェア拡大、認定放送持株会社体制への移行、人事・採用・評価・予算制度の改革、日テレゼミナール創設などだ。ルーブル美術館との20年間にわたる連携協定にも年末に調印した。
一、しかし、この程度で満足していては、これからの放送業界の厳しい競争に勝ち残ることはできない。開局60年のキーフレーズは「日テレはもう一度、テレビをゼロから」。60年は59年目の延長ではない。リセットしてもう一度テレビをゼロから考え直す機会だ、ということだ。
一、であるなら、番組も事業も、組織・人事も、一度白紙に戻して見直す必要があるのではないか。そして何よりも社員一人ひとりが自らの意識を変えることが不可欠ではないのかと思う。前例踏襲とは決別する。高い志を持つ。勇気と情熱で目標を達成していく。日本テレビ・グループは60年を機に、そうしたプロフェッショナルな人々の集団に成長していきたいと思う。
一、60年の企画は、番組、事業など多くのものがすでに動き出している。ぜひ最後まで手を緩めず、大きな成果をあげていただきたいと思う。同時に、創意工夫に締め切りはない。大胆不敵な企画を提案してほしい。
一、私たちの敵は他のライバル局ではない。私たちの中に潜んでいるのではないか。飛躍を阻む私たちの中の古い日本テレビは取り壊し、現状に安住しがちな日本テレビは乗り越えていく。私たち自らが「打倒・日テレ」をスローガンにするくらいの気概で、節目のこの1年を突進していこう。
一、5年後、10年後、20年後に振り返った時、「あの開局60年の年に勇気をもって改革に踏み出していたら、新しい事業に挑戦していたら、ここまでつらい思いをしなくて済んだかもしれない」といった悔悟の念にさいなまれることのないように、先手を打って行動したい。これが私の年頭の決心だ。