文化放送の三木明博社長は7日、グループ各社の社員に向けて要旨次のような年頭挨拶を行った。
一、会社としてもそれぞれの個人としても、劇的な環境変化が進む中で、今私は「手に入る価値 手に入るもの」と「手に入れる価値 手に入れるもの」について考えている。
一、「手に入る価値 手に入るもの」とは、その会社や個人が持っている財産や権利などから受けるべきものとして、当然のごとく得られる価値である。それに対し、「手に入れる価値 手に入れるもの」とは努力をし、競争に勝ち抜いた先に得られるものだと思う。
一、誤解を恐れずに言えば、文化放送も60年以上という長い歴史の中で、その大半を「手に入る価値 手に入るもの」で運営してきた。
一、しかしながら、ここ10年あまり、主にインターネットの急速な発展によるメディアの多様化、急激な社会構造と意識との価値観変化によって、「手に入る価値 手に入るもの」は減衰し、好むと好まざるとに拘わらず、「自ら新しい価値 新しいもの」を手に入れる方向に舵をきらざるを得なくなっている。そうした状況は文化放送だけでなく、グループ各社についても全く同様である。
一、昨年のこの年頭所感でグループ社員の方々に「新しい事業提案の募集」をさせていただいた。その中から1社が既に新しい会社としてスタートしており、それ以外の事業性の高いものについても、今後も門戸を拡げていきたいと思っている。今年幕張にオープンする最大級のイオンモールで展開する「母子による職業体験と食育」をテーマにした「カンドゥー事業」。この他にも今年は海外との連携を視野に入れた取り組みもスタートさせたいと考えている。
一、昨年までの「アニサマ」をはじめとするA&G事業と他業種との連携、「radiko」など他の伝送手段への拡大、既存の著作権ライセンス事業、不動産事業など今後
(Q1)続かとも新しい収益事業への取り組みは強化していきたいと思っている。
一、そして何より大切なのは、こうした新しい取り組みが可能になったのは、本業の回復が基本にあったからだ。営業局をはじめとする全員の取り組みと努力が功を奏し、売上げが下げ止まってきた。
一、その意味で、編成面においての今年4月の大幅改編は、我が社の業績回復傾向が定着するか否かの重要な意義を持っており、全社、グループ挙げて今回の改編を成功に導くよう、一丸となって支えていく必要がある。
一、今、ラジオの最大の課題、関心事は「V?Lowマルチメディア放送」の行方だと思う。いずれにしても我が社としても自らの経営環境、経営資源と、ラジオというメディアの将来像を見据えて結論を出すことになる。
一、何より忘れてはならないのが、送り手である我々が「受け手にならないこと」だ。番組とか聴取率は与えられるものではなく、自分達で作るものだ。「何と言われようとこれだけは言っておきたい」、「ここだけは譲れない」。そんな送り手の信念こそが「オンリーワンの価値」であり、「手に入れる価値 手に入れるもの」だと思う。「言葉の力」を信じ、「ラジオの未来」を信じ、「仲間」を信じて、前だけを見て進んでいきたいと思う。