放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)は27日、事案「無許可スナック摘発報道への申立て」について委員会決定を発表した。
申立人は藤田記久とその家族、被申立人はテレビ神奈川。苦情の対象となった番組は「tvkNEWS930」で、2012年4月11日午後9時35分頃から1分9秒放送したもの。
テレビ神奈川は2012年4月11日の「tvkNEWS930」内で、神奈川県警によるスナック女性経営者の風営法違反の無許可営業の現行犯逮捕を実名、年齢、住所とともに放送。全体が1分9秒で、そのうち本人とはっきりと分かるかたちで、この女性経営者を写し出した映像が計4分37秒あった。顔のアップ映像や警察の車に連行される場面も含まれていた。
また、テレビ神奈川は運営するニュースサイトに動画とともに掲載。ニュースサイトの項目は1週間で自動的に削除されたが、サイト及びfacebookページ、twitterアカウント等を通じて動画と静止画を閲覧できる状態が1か月以上続き、この女性経営者から抗議があるまで放置されていた。
委員会決定は、現行犯逮捕の事実を放送した内容に誤りはないが、事案は風営法違反の中でも悪質性の比較的軽微な「無許可営業」である。放送は、映像の存在を強調し、繰り返し女性経営者の映像を流した。その結果、この女性に対する過剰な制裁的・懲罰的効果が生じ、本人とその家族に精神的苦痛を与えた。
この点で、放送はプライバシー等に関する明確な権利侵害は認められないものの、「報道の自由」という観点を考慮しても、放送界がこれまで積み重ねてきた事件報道のあり方をめぐる議論を十分に踏まえた形跡はなく、人権への適切な配慮を著しく欠いており、放送倫理上重大な問題があると勧告する。
また、サイトにテレビニュースがそのまま掲載され、かつ長期間閲覧可能な状態で放置されていた点、サイトの管理に問題があった。今後、適切な管理を行うことを要望するとしている。